【DEEP.】青山学院大学山岳部 ヒマラヤ未踏峰への挑戦 〜レイヤリングについて〜

この記事の目次
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はじめに

突然ですが「レイヤリング」という言葉をご存知ですか?レイヤリングとは、ひとことで言うと「重ね着」のこと。実はこのレイヤリング、かなり奥が深いのです。

今回のWhitewave(6960m)遠征登山にあたり株式会社finetrackのウェアで挑もうとしています。といいますのも、今回のルートは春夏秋冬様々な環境を乗り越えていかないといけませんので、5レイヤリングという技術が有効ではないかと考えたのです。

ウェアをちょっと考えるだけで、快適性も安全性もあがるのであれば、もう考えないという選択肢はありません。今回の記事は、Whitewave遠征隊の隊員である私、池田がレイヤリングについて紹介します。

海外の遠征登山に限らず、日本国内の登山、スキー、沢登り、トレラン、マラソンといった汗をかいたあとに体温低下を抑えたいスポーツには有益な技術だと思いますので是非参考にしてみてください。

レイヤリングは技術だ~お手軽なのに強い味方~

本来技術とは、身体に染みこんでないと100%の力を活かせないものが多いです。例えば、クライミングをする人ならロープワーク、キャンプをする人ならテント設営→料理→片付けのスムーズな流れ、といった経験に基づく技術は何度も繰り返して体に染みこませておかないといざという時もたついちゃうってことありますよね。

そういった技術とは逆に、「レイヤリング(重ね着方)」は、既にメーカーや先人たちが実際にフィールドでテストしているため、アウトドアではどんな格好が良いのか&悪いのかを彼らが先に経験してくれているんです!

そのため自分で経験する必要はなく、メーカーの推奨をする格好をそのまま真似することが上達の近道でもあります。(もちろん良い悪いの判断は人それぞれなので、自分で試して経験を得るのも全然アリですよ!)

実際、登山では綿シャツを着てはいけないというのは今や登山界の常識ですが、その常識はかつての先人たちが山で、乾きの早いポリエステルではなく濡れたらなかなか乾かない綿シャツを着て相当体の冷える思いをした経験から生み出されています(当時はポリエステルのシャツや透湿性の高いGORE-TEXを使ったレインウェアなど無いor超高価で買えなかったらしい...)。

レイヤリングに関しては、このような経験を本・雑誌・インターネット等で知識として仕入れておけば、ほぼ経験したようなものです。あとは、実際に利用して練度をあげておくことで、常に最適に使いこなせるようになります。

こんなお手軽に身に付くものなのに、時に自らの命を救う強い味方になります!先ほど書いた綿シャツの事例で、過去にも汗で濡れた綿シャツを着て何でもない稜線を歩いていて、幾ばくかの雨風にやられて夏にもかかわらず結構な数の方が低体温症で亡くなっています。

人間は山の中では食べる・動く・着込むしか体温を上げる術を持ちません。服は自分の命を守るものです。冬山登山で使うジャケットを「ハードシェル」と呼ぶのはまさに命を守るモノとしてうってつけの名前でしょう。レイヤリングを学ぶということは、命の守り方を学ぶということであり、しかもレイヤリング技術を身に付けるのに実地訓練はいらないという手軽さ、これはもう知るっきゃない!

finetrackの5レイヤリング

finetrack社が提唱している「5レイヤリング」というものがあります。

これは真夏の炎天下や真冬の吹雪の中といった考えられるありとあらゆるシチュエーションのために、最大5枚のウェアをケースに合わせて適切に重ね着して、身体を冷やす原因である、汗といった「内部からの濡れ」&雨などの「外部からの濡れ」を肌から遠ざけようという考え方です。これが今回のWhitewaveの遠征に有効だと考えました。

従来「登山には3レイヤーのレイヤリング(吸汗着+保温着+防水着)」という常識がありましたが、これには重大な欠点がありました。

それは真夏の炎天下や真冬の吹雪の中といった厳しい状況には対応が難しく、快適性が犠牲になるということです。それぞれのウェアの機能が限定されている(吸汗着なら吸汗機能に特化している)結果、それぞれのウェアの汎用性が低くなるため汗をかき過ぎた場合、ウェアの汗処理能力を超えてしまって汗冷えをおこし、体温を上げるために身体がエネルギーを消費することで体力の消耗をおこすという問題があったのです。

また体力消耗までは繋がらなくても、背中などが汗でビショ濡れになり冷やされて不快感を感じるといったことが多かったのです。

日本の冬山では時にマイナス20℃を下回り、更に追い打ちをかけるように風速30mの風が吹くこともあります。風速1mで体感温度1℃下がるので、体感温度はマイナス50℃という非常に過酷な状況になります。こんな状況で汗冷えで体力消耗したら・・・と考えるとゾッとしますよね。

だからこそ低体温症を招く原因である汗冷えを防ぐ為に、3枚ではなく5枚のウェアで汎用性をもたせて「濡れ」に強くする必要があるんです!

そこで5レイヤリングでは、汗処理や外からの防水を複数のウェアで行ったり、ウェアに換気のためのジッパーを設けることで汗処理能力・防水機能・調湿性を向上させています。

さて、5レイヤリングを細かく説明していきたいと思います。レイヤリングは、L1~L5と5段階の機能と役割を定義し、肌に近いものがL1で、最も外にあるのがL5です。

L1:ドライレイヤー

機能:撥水/防臭
役割:汗が乾くまで濡れているのは、体温低下につながることから、肌から汗を遠ざけていち早く汗をL2に移動させる役割を持つ。しかしながらL2に移した汗は肌には戻させないという相反する機能を持つ製品(詳しくは後で)。肌に直接触れている部分ですので、実は高価なアウターよりも重要な装備となります。値段もアウターに比べると全然安いので、まず一番に買い揃えるのがよさそうです。


L2:ベースレイヤー

機能:吸汗/拡散/保温/防臭
役割:汗を徹底的に吸って、いち早く生地に拡散する役割を持ちます。拡散することで空気に触れる表面積が増えるためより乾くのが早くなります。先程のL1は単体だけでは殆ど効果がなく、L2のベースレイヤーを併用することで真価を発揮します(もっともL1だけだとスケスケなのでビジュアル的にアウト、、、)。


L3:ミッドレイヤー

機能:吸汗/蒸散/保温/換気
役割:L2から来た汗をさらに吸い上げてさらに拡散することで、汗を蒸散させます。L2と機能が似ていますが、違いとしては生地が厚めになるorファインポリゴンを入れることで保温に力を入れていて、かつ暖かいけど蒸れさせないように換気用のジッパーである「リンクベント」を設けています。


L4:ミッドシェル

機能:防水/透湿/換気/防風
役割:ある意味もっとも中途半端なウェア、だがそれが良い。中途半端ということは言い換えればオールマイティーということでもあります。そしてこのウェアはウィンドブレーカーやソフトシェルに近い機能を持っていますが、L4のラインナップであるフロウラップは「ちょうど使いやすい仕上がり」。厚すぎないし蒸れないのに生地にはアウターにも使われている防水性のあるものを採用しているため小雨にも対応と至れり尽くせりです(縫い目に防水処理はしていないので降られ続けると浸水します)。もちろん換気用のジッパーである「リンクベント」付き。L5+L4の併用で防水性を強化するのがおすすめです。


L5:アウターシェル

機能:防水/透湿/換気
役割:体力を奪う雨・風・雪から命をガードします。シェルの名前は伊達じゃない。そしていままでのアウターのゴワゴワ感は一切ない、しなやかでストレッチの利く素材を独自開発するこだわりっぷり。ストレッチ性が良いので、非常に快適です。


これらのL1~5を環境に合わせて最適に組み合わせて使うことで、体温を落とさずに行動をすることができるようになります。

これまで我々は3レイヤリング(ポリエステルのTシャツ、フリース等の保温着、アウター)で山行をしていたのですが、今回のWhitewave遠征にあたりレイヤリング技術を効率的に習得できるシステムを構築することにしました。

finetrackの強みは「痒い所に手が届く」!?

finetrack社は、アウトドア業界の代表的素材であるGORE-TEXではなく自社開発の素材を使用したり、一貫した日本国内生産といったアウトドア業界でもひときわ異色な存在であります。

そんなメーカーが生み出す斬新なアイデアに基づく製品は常に異色を放っていますが、それだけがfinetrack社の凄さではありません。finetrack社は「遊び手=創り手」のモットーを元に、社員の方々が実際に製品のプロトタイプをフィールドで繰り返しテストすることにより、より優れた製品を生み出しています。

そのため生み出された製品は自然と登山上級者でも満足するようなレベルになっています。

finetrack社が開発した素材で代表的なものの1つに独自のシート状立体保温素材である「ファインポリゴン」があります。

本来服を着た時の暖かさというのは、その素材が熱を持っているのではなくその素材の繊維に含まれる空気が体温で温められ、この空気が身体を包むことで暖かく感じているのです。

そして「ファインポリゴン」は乾きの早いポリエステルの薄い生地を特殊な加工でクシャクシャにしてシワをもたせることで空気を溜めるボリュームを作り、更にこのシートを何層にも重ねることでボリューム(空気の層を作ることで外気温の影響を抑える効果)を増しています。

今まで登山の防寒着やシュラフはダウンを用いるのが一般的でした。ダウンは極めて優れた保温力を持っていますが、濡れると保温力が急激に下がってしまう特性がある(ダウンの綿毛の部分に暖かい空気が溜まるのですが、濡れるとその綿毛が纏まってしまい暖かい空気を溜められなくなってしまう)ため、山では濡らさないように防水バッグの中に入れたりと、なかなか気を遣うものでした。

しかしファインポリゴンはこの濡れに弱いデメリットを解消した素材になります。乾燥時の保温力はダウンの方に分があるのですが、、、湿潤時は本当に暖かい!そしてポリエステル素材を使っているで濡れ感が少ないし乾くのが早い!これは登山者には最適なんじゃないか、、、と思わせる製品です。しかも生地自体にストレッチ性があるので、冬の壁をやる人には最高にマッチすると思いますよ!

最近では、自衛隊のレンジャーの方々も多く使われているというものです。理由としては、気温の低い雪山などの訓練において、2時間ハードに動いて汗をかいたあと、1時間その場でステイという活動を繰り返すことがあり、そんなときに保温力の低下が抑えられるこの製品がとても有効というのが選ばれた理由だそうです。

他にもファインポリゴン以外にfinetrack社が非常に重視していることに「ストレッチ性」があります。全てのウェアにストレッチ性を持たせ、行動時のストレスを大幅に軽減しています。

ズボンや冬用のアウターではストレッチ性が無いと膝が突っ張って歩きづらいですし、腕を上げた時身頃部分が持ち上がって気持ち悪い、、、ということも。そういった余計なストレスを減らすためにもよく伸びるウェアは必須だと言えるでしょう。

スキンメッシュ® 使用レビュー

色々な製品をレビューしたいのですが、かなり長文になってきてしまいましたので今回はスキンメッシュのレビューだけにして、また改めて記事を書きますね。

前述の通りスキンメッシュは肌の上に直接着るL1にあたりますが、このウェアを着ていると着ていないとでは快適性が全然違います。これは多くの人が実感できると思います。

まず効果としては汗冷えがかなり低減されて、休憩時にザックを下した時や稜線上で風に吹かれた時に特に背中のブルブルッとくる冷えが軽減されて不快感が無くなりました。

そして、汗冷えが無くなったことによって、余分に1枚着る必要がなくなりました!

今まではレインウェアやウィンドブレーカーを羽織ることで風に対処してきましたが、レインウェアはともかくウィンドブレーカーは防風性に特化した道具であるため、風がない時や運動量の高いラッセルをしている時などは必要なく逆にお荷物でした。

下のURLはfinetrack社のYoutubeチャンネルに投稿されているスキンメッシュ®の機能解説動画に繋がります。(音量注意!)

さて、いよいよ出発まで2週間を切りました。次回は、現地カトマンズからお伝えしたいと思います。

青山学院大学山岳部情報

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CAMPIC編集部

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