【DEEP.】青山学院大学山岳部 ヒマラヤ未踏峰への挑戦 〜準備&訓練の様子編〜

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はじめに

みなさんこんにちは。登攀隊長の田口(大学4年生 山岳部主将)です。副将杉本に変わり、今回は私よりヒマラヤ未踏峰への挑戦に向けた準備と訓練について紹介させていただきます。

【DEEP.】青山学院大学山岳部 ヒマラヤ未踏峰への挑戦 〜遠征決定編〜

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【DEEP.】青山学院大学山岳部 ヒマラヤ未踏峰への挑戦 〜メンバー紹介編〜

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ルートについて

早速ですが、今回挑戦するWhitewave(6960m)をどう登るかを色々な角度から検討しました。

その結果、2つのルートが考えられました。一つは東稜。もう一つは北壁。それぞれのルートを詳しく説明します。

ニュージーランド隊撮影・提供

ルート1:東稜

光の当たった部分がちょうどWhitewaveの山頂で、左側にのびるスカイラインが東稜です。ベースキャンプから東稜のコルまで、凸凹の氷河の壁を登ります。コルは標高6400m。

ここからから急峻な稜線を辿って頂上に至るルートです。核心は、稜線へ上がるまでの氷河の壁と、雪のナイフリッジ(※1)。氷河の壁は、写真と地形図から4ピッチ(200m弱)程度だろうと想像しています。

その後はひたすら慎重にナイフリッジを歩くだけ?恐らくそんな甘いものではないと思いますが。隊員3名ですので、スタカット(※2)をしつつ、隊員1名はユマール(※3)での通過です。危険箇所はしっかりとロープを固定して通過することも考えています。

必要な技術としては、雪稜の歩行。足を踏み外して落ちたら大変ですので、絶対転ばないという自信と細かなユマール架替えの技術です。もちろん、ルート工作も重要ですね。

なお、このルートについては、山頂を踏むことを目標とするため、より安全を確保すべくシェルパの助けを借りることも考えています。

ルート2:北壁

真正面の壁が北壁です。中央当たりにラインを取り、標高差1200mの壁を登っていきます。ひたすら雪の壁を上へ登っていくことになりますが、頂上付近で一部岩がでている可能性があり、その場合はハーケンなどの支点を打ち込んだりしながら進まないとなりません。もちろん打ち込んだハーケンは回収です。

下りは、東稜を考えていますが、ルートの状況によってはスノーボラード(※4)やV字スレッド(※5)で支点を作り、懸垂下降で降りてくる可能性もあります。

必要な技術は、アイスクライミングと、エイドクライミング。ガイドの助けは一切使わずに、遠征隊メンバーだけでルートを拓くことを目標とします。

技術習得のためのトレーニング山行

北壁を想定した日本国内のルートを探したところ、標高差1000mのアイスクライミングならば黄蓮谷が良さそうだと考え、村上監督と二人でトレーニングに向かいました。

普通に行っても訓練にならないので、アタックを想定して、2日間で完遂することと、装備はある程度の重量を持つため、テントを持っていくという条件を付与。

なかなかハードでした。。

山行中何度も挫けそうになりましたが、Whitewaveでは標高が7000mととても高所のためもっと辛いはずです。安全面も考慮しながら、限界ギリギリの負荷を体に掛けるという訓練ですので、超えるっきゃありません!

なんとか無事下山できましたが、実際の核心は、自宅に帰るまでの高速道路でした。。

体力強化のためのトレラン参加

隊員の中で唯一7000mの経験がある村上監督以外3名の学生は富士山が最高点です。心拍数が上がって多少体に支障があっても動ける体力をつける必要があります。

箱根駅伝のように大会前に試走できたらよいのですが、未踏峰ですのでそれは流石に叶わないので想像して練習を考えました。

まず、隊員全員の体力がどれくらいなのかを定量的に把握するために、トレランの大会を利用しました。部員全員で参加したのですが、無事遠征隊員達が上位を占めてくれました。

今後のトレーニング予定としては、三つ峠での登攀訓練と富士山での高所順応。三つ峠では、徹底的にマルチピッチのロープワークを修練し、富士山はお鉢でのランニングですね。3776mの標高はすでに高山病になる標高ですのでトレーニングには最適です。

高所順応はこれに加え、三浦ドルフィンという高所施設で5000mの宿泊体験で体を慣らします。

装備や食料の準備

続いて装備や食料についてです。

飛行機では持っていける重さが30kgまでなので、超過する分を先に輸送をします。

夏には使わない高所靴やアイゼン、アイスバイルといった装備をネパールに送っておきます。三つ峠などでアイゼン登攀の練習もしますが、本番で使うアイゼンのつま先が岩に削られて丸まってしまうので、練習には別のアイゼンを使います。

食料はキャラバンとアタックの2つの場面に分け準備します。

キャラバン中は小さな村があるので村で食糧を調達して食べます。ほぼダルバートというカレーのような料理になります。。

飽きないためにも調味料は持っていきます。醤油、味噌、マヨネーズ、七味、わさび、ふりかけ、お茶漬けの素など。ほぼ白米かジャガイモでエネルギーを摂取することになるので、ふりかけとマヨネーズが重要だと考えています。

余談ですがお茶漬けは飛脚や旅人の食べ物でした。江戸時代の宿場では1日分の米を朝炊いて、お昼頃に来た方に冷めた米をお茶で戻して食べやすくしていたそうです。すぐ出せるしお米を何度も炊く燃料を考えると合理的ですね。

私たちは、現地で食べれるものに無理やり味付けをして楽しむ予定です。

アタックの食料計画は難しく、練習同様に高所でどれだけ食欲が湧くのかが全く未知の領域ですが、軽い、カロリー高、食べやすい、この3点で選んで色々な食品を実際に食べながら選定していっています。

今回はここまでとなります。ありがとうございました。

青山学院大学山岳部情報


※1 ナイフリッジ
ナイフの刃のよう切り立った尾根

※2 スタカット
ザイルを結び合って行動する際に、一人が登攀している間、他の人が確保する登り方

※3 ユマール
垂直に張られた固定されたロープを登るための器具

※4 スノーボラード
アイスクライミング等での支点確保の方法のひとつ

※5 V字スレッド
アイスクライミングでの下降の方法のひとつ

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